634 直列共振回路の周波数特性理論
以下に,$ LC直列共振回路の例を示す(10$ \Omega,39$ \Omegaは整合抵抗).
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図633.1 直列共振回路の周波数特性測定回路
■$ Q_0の導出
上の回路において,共振回路のインピーダンス$ \dot{Z}は,次式のように整理しうる.
$ \dot{Z} = r' + j\omega L + \frac{1}{j\omega C} = \sqrt{\frac{L}{C}} \left\{ \frac{1}{Q_0} + j\left(\frac{\omega}{\omega_0} - \frac{\omega_0}{\omega}\right) \right\}……(634.1式)
共振周波数$ \omega_0においてインピーダンスの大きさは最小になり,かつ抵抗成分$ r'だけとなる.
この回路を流れる電流の大きさも最大になる.
もっと特徴的な共振現象がコイルとコンデンサの端子電圧に現れる.
回路図に示すコンデンサにかかる電圧$ v_2の共振回路への入力電圧$ v_1に対する比は
$ \frac{\dot{v_2}}{\dot{v_1}} = \frac{-j\frac{\omega_0}{\omega}}{\frac{1}{Q_0} + j\left(\frac{\omega}{\omega_0} - \frac{\omega_0}{\omega}\right)}……Qの定義(1)(634.2式)
で与えられ,下図のような共振特性を示す.
https://gyazo.com/a5df6a60fbfb45b7a4ea5498a658d663
図634.2 直列共振回路の周波数特性(横軸対数)
ここで,
$ Q_0≫1であれば,共振周波数より十分低い周波数では,
振幅比:$ \left|\frac{v_2}{v_1}\right|_{\omega \ll\omega_0} \fallingdotseq 1
$ \dot{v_2} の $ \dot{v_1} に対する位相差: $ 0^\circ
共振周波数より大きい周波数では,
振幅比:$ \left|\frac{v_2}{v_1}\right|_{\omega \ll\omega_0} \fallingdotseq \frac{\omega o^2}{\omega ^2}
位相差:$ -180\degreeとなり振幅比は急峻に小さくなる.
ちょうど共振点においては,
振幅比:$ \left|\frac{v_2}{v_1}\right|_{\omega \ll\omega_0} \fallingdotseq Q_0
位相差:$ -90\degree
※この時,回路に印加している電圧の実に$ Q_0倍の電圧が内部で発生している.
■$ Q値の第1の意味
一般に直列回路の$ Lと$ Cの端子電圧$ v_Lと$ v_Cは互いに逆位相だが,共振状態においてはこれらの大きさが等しくちょうど打ち消し合い,抵抗$ r'の端子電圧$ v_rが印加電圧$ v_1に等しくなっている.
このとき,この$ v_Lと$ v_Cの大きさは,印加電圧$ v_1の$ Q_0倍になる.
実際には10倍~100倍,回路によっては1000倍にもなる.
これが$ Q値の第1の意味である.
■$ Q値の第2の意味
共振カーブの狭さを表すファクタとしての意味が,$ Q値の第2の意味である.
「比帯域幅の逆数は$ Q_0値に等しい.」すなわち,
$ Q_0 = \frac{\omega_0}{\Delta \omega} = \frac{f_0}{\Delta f}……Qの定義(3)(634.3式)
ここで半値全幅$ \Delta fは,図634.2,図634.3に示すように,最大振幅の$ 1/\sqrt{2}を与える周波数帯域で定義される.
※$ 1/\sqrt{2} = 3dBdown = RC回路の遮断周波数と同じ考え方.$ Qの半値は電力の半値なので電圧/電流では次数が下がり$ 1/\sqrt{2}に
https://gyazo.com/60854fdd08b3db1ed1ee82c2ef7ff881
図634.3半値全幅$ \Delta f:$ f_0近辺の拡大図(正方眼)
以上.
2024/4/8